【レポート】これからの学校のあり方を考える「三宅町教育フォーラム」
教育長の大泉です。
2月11日、三宅町教育フォーラムを開催しました。
三宅町内外から120名の参加があり、会場の三宅町文化ホールは熱気に包まれました。この小さな町の教育にこれだけたくさんの方が関心をもってくださることをとてもうれしく思いました。
どうしてフォーラムを開催しようと思ったのか、そんなことを書いてみようと思います。
昨年、大阪府阪南市のNPO団体主催の教育イベントが催され、そこで初めて映画『夢みる小学校』を鑑賞しました。『夢みる小学校』は『南アルプス子どもの村小学校・中学校』を中心に、子どもたちの自由な学びを尊重し、「楽しくなければ学校ではない」ということをコンセプトとして運営されているいくつかの学校を紹介したドキュメンタリー映画です。
その時に感じたのは、もしこの映画を教育委員会主催で上映するとなると大きな波紋を呼ぶだろうなということでした。私たちが守り続けてきた日本の公教育の真逆を紹介するわけですから…。でも、同時にそうするべきだ、そうしたい、と強く感じたのでした。全国で30万人もの不登校の子どもたちを生み出している学校教育がこのままで良いのかということをみんなで考えることが大事だと思ったのです。公教育を守ることが私たち教育行政の責務であるけれど、そんなふうに一石を投じるのも私たちの役目ではないかと思ったのです。
映画で描かれているような学校をオルタナティブスクールと呼んでいます。オルタナティブ(alteranative)とは「主流の方法に変わる新しいもの」という意味で、従前のカリキュラムにとらわれず、学校それぞれの方針や理念で運営されている学校のことです。フリースクールもオルタナティブな考え方で運営していることが多いですが、フリースクールという呼び方は不登校に対応する学校という意味あいが強くなります。
何度も教育委員会事務局で議論を重ね、三宅町教育フォーラムの中で『夢みる小学校』上映会を開催しようということになりました。
この映画は、三宅町で子どもたちに育んでいきたい「非認知能力」と、とても親和性のある内容だと感じていたので、「非認知能力」に詳しい徳留宏紀(とくどめひろき)さんを教育フォーラムにお呼びすることにしました。当時まだフィンランドで活動中であった徳留さんと、オンラインで何度も話し合いを重ね、帰国に合わせてフォーラムを迎えることとなりました。
司会進行は事務局のUさんに無理矢理押しつけてしまいましたが、当日はみごとにやってのけてくれました。シャイなUさん、やはり写真はNGだそ
うです。
教育フォーラムは次のような構成でした。
フォーラム全体を振り返ってみたいと思います。
何よりも「子どもたちは未来からの留学生」というこのフォーラムのテーマの意味をくみ取っていただいた感想が多くてうれしかったです。どういう視点で学校教育が変わっていかなければならないのかということをみんなで考える時間になったのではないかと思います。
本来なら、お越しいただいた会場のみなさん同士での対話の時間や、トークライブでの壇上の二人とみなさんとの対話の時間があったらよかったのですが、時間や会場の都合で設定できなかったことが残念でした。おそらくもやもやした気持ちでお帰りになった方も多かったのではないかと反省しています。次回は対話の時間を大事にしたフォーラムにしたいと思います。
映画上映のあと20分の休憩時間をとったのですが、会場のみなさんがそれぞれ映画の感想を語り合っている様子がとても印象的でした。「自由」という意味についてもいろいろ考えた方も多いのではないでしょうか。学校の中であんなに子どもたちを自由にさせてよいのか、もっと「規律」を教えることが必要なのではないか。きっとそんな会話もあったのではないでしょうか。これからの学校のあり方を考えるうえで避けては通れない議論の一つとなるでしょう。
また、こういう映画を上映したり、先進的な取り組みを紹介すると、よく出てくるのが「私立だからできるよね。」という意見です。「私立だからできる」ことはたしかにあると思いますが、そのことと「公立ではできない」ということは同じ意味ではない、ということが、私が一番伝えたかったことなのかもしれません。
「私立だからできる」≠「公立ではできない」
は、私がずっと抱いている教育改革への思いです。徳留さんが学んできたフィンランドだからできる、日本ではできない、と言ってばかりでは成長はありません。それと同じです。
私は映画に出てきたような学校を三宅町にそっくりそのまま創りたいと言っているのではありません。学校が、子どもにも先生にとっても楽しい場所で、自ら学びたくなる場所になることを願っています。そのためにはどうしたらよいのかをこれからもみなさんと一緒に考えていきたいと思っています。