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学校は食物アレルギーに対応できるのか?
こんにちは。
教育委員会事務局の増田です!
今回は命に関わる「食物アレルギー」の話です。
かなり前になりますが、8月18日(金)、三宅町交流まちづくりセンターmiimoにて、磯城郡(三宅町、川西町、田原本町)の教育委員の皆さま、学校・認定こども園などの先生方にお越しいただき、食物アレルギーについての研修を行いました。
この研修は、学校現場より「学校で食物アレルギー対策の計画やマニュアルを策定したいので、研修をしてもらえないか。」との依頼をいただいたことがきっかけとなり開催することになりました。
この依頼を受けてから、個人的に国保中央病院で開催されたオンラインの食物アレルギー研修を受講したりして、食物アレルギーについての勉強をしたのですが、話を聞けば聞くほど、食物アレルギーの怖さを感じます。
(国保中央病院では定期的に無料のアレルギー教室を開催していますので、ぜひご参加いただければと思います!)
食物アレルギーって何?
食物アレルギーって、ご自身が、または、お子さんが悩みを持つ方も多いかと思いますが、改めて定義するとこんな感じです。
食物アレルギーは、ある特定の食べ物を食べたり、触れたりした後にアレルギー反応があらわれる疾患です。
食物アレルギーを引き起こす食べ物は、いろいろあるんです。有名なところでは、卵、牛乳、小麦。あとは、ナッツ類、そば、甲殻類など。
皆さんもこれらアレルギーを引き起こす主な原材料は「特定原材料」として、スーパーなどの加工品の裏側に記載されているのを見ていると思います。
消費者庁は特定原材料を用いる加工食品に当該特定原材料を含む旨の表示を義務付けているんです。
食物アレルギーの症状は?
食物アレルギーの症状は、多岐に及びます。
さきほどのアレルギーポータルには次のように記載しています。
・皮膚症状:かゆみ、じんましん、むくみ、発赤、湿疹など
・呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり、咳、息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒュー(ぜん鳴)など
・粘膜症状:目の充血や腫れ、涙、かゆみなど、口の中や唇、舌の違和感、腫れなど
・消化器症状:下痢、吐き気・嘔吐、血便など
・神経症状:頭痛、元気がなくなる、意識もうろうになるなど
食物アレルギーの症状は全身に表れ、それぞれの症状は、個人差があり、複数が表れることもあります。複数の症状が発症する場合を「アナフィラキシー」といわれます。
また、さらに血圧低下や意識障害など急激に全身の症状が進行する場合を「アナフィラキシーショック」と呼び、生命の危険にまで及ぶことがあります。(アレルギーポータルより一部抜粋)
食物アレルギー対策は学校の最重要課題
食物アレルギーを抱える子どもは、三宅町でも年々増えているように感じます。三宅町の小中学生にも食物アレルギーと診断され、既往歴があり、エピペンと呼ばれる薬を処方されている子どもは複数います。
そのため、学校では、入学前の健診(就学前健診)のときから、児童の食物アレルギーの有無を直接保護者から確認し、ケアが必要な児童生徒の情報は学校全体で共有されます。
そして、学校給食での除去食の提供などの対策を行い、食物アレルギーが発症しないように細心の注意で対応を行っています。
突如発生する「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」
ただ、食物アレルギーは、今まで何もなかった食べ物でも、食後の運動や体調の変化などで突如アレルギー症状が発症し、アナフィラキシーショックに至る場合もあるんです。(成人してから急に花粉症になるようなイメージに近いでしょうか。)
特に10歳から20歳代では、新たに食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症する事例が多いようです。
アナフィラキシーショックが起こったら、、、
万が一に食物アレルギーによるアナフィラキシーショックが生じた時には、いち早く医療に繋げることが求められるます。
ただ、新型コロナウイルス感染症による影響もあり、現在も救急車の到着が予定よりも遅れる可能性があります。
そのため、救急隊員と連絡しながら、アナフィラキシーショックを発症した子どもの症状を随時把握しながら、重症化しないように、エピペンと呼ばれる頓服薬の使用方法などの研修を実施したり、子どもたちのエピペンの場所を把握したりするなどをしています。
「エピペン®注射液」は、医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。
アレルギー事故発生時の学校の対応はこんなにも大変、、、
ただ、食物アレルギーによるアナフィラキシーショックなどが発生すると、エピペンの使用するなど、学校全体での対応が必要となります。
保健の先生(正式には「養護教諭」と呼ばれます)や校長先生など1人2人ではとても対応できません。
例えばこんなことをしないと行けません。
①アナフィラキシーショックが発症した児童生徒の観察、看病(目を離さず、声かけや病状の変化の観察)
②他の先生の応援依頼(職員室まで走って校内放送などをする)
③救急車への通報(現場の児童生徒の状況を伝える)
④病状変化の記録(救急隊員に伝えたり、保護者、教育委員会へ報告するため)
⑤保護者への連絡
⑥児童生徒のエピペンの用意(管理場所からエピペンを持ってきます。)
⑦AEDや救急セットを持ってきます。
⑧周りにいる児童生徒を教室に戻す。
⑩アナフィラキシーショックの病状の把握、エピペンを打つかの判断
⑨エピペンを打つ(効果は15分ほどしかないため、救急隊員の到着時間も考慮する)
⑩エピペンを打つ時には児童生徒が動かないように数人で児童生徒の手足を抑える
11 校門などでの救急隊員の誘導
12 救急隊員が搬出するときの障害の除去(教室内なら扉を外すなど)
一つ判断を間違えれば、死亡事故に
アレルギー事故が起きれば、刻々と子どもの症状は変わっていきます。万能薬のエピペンも完璧ではありません。
エピペンの効果は15分程度。基本的には1本しか処方されていません。救急車は10分ぐらいはかかるはずなので、悠長に校長に判断を仰いで、対応を考える時間はありません。
現場の先生が判断をしないといけなくなる場合もすくなくありません。
それに少しでも判断を誤れば、報道されている食物アレルギーによる死亡事故にも繋がりかねません…
対策は、シミュレーションを重ねるしかない
食物アレルギーは家で食べる朝食などが原因で学校内で発症することもあります。また、昨日まで平気だったのに運動を機に「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」が発症することもあります。
そのためアレルギー事故を完全に無くすことはかなり難しいため、学校現場でできることは、いつかは発生するであろう食物アレルギー事故を想定してシミュレーション研修を重ね、万が一の対策をすることしかありません。
ただ、万が一といっても、最初の研修をした3町だけでも年間8件のアレルギー事故が起こっているという現実があります…
出来うる限りリアルなシチュエーションで、刻々と変化する病状を判断する訓練をしないと、実際の事故では頭が真っ白になるはずです。(夏休みの式下中学校の先生方の研修でも対応された先生は頭が真っ白になる瞬間があったと、言われていました。)
シミュレーションでは、いくら失敗しても構いません。失敗がないと、対策を考える機会がなくなりますので、万が一の時に、正しい処置をできればと。
来年度以降は学校現場で専門の講師先生によるリアルな症状を再現しての研修をしていければと思います。