学校給食のご飯を地産地消100%にできるのか?
こんにちは。
教育委員会事務局の増田です。
昨年度の冬。農業政策を担当する産業振興課の吉本くんから内線が入りました。(増田一押しのあのクワガタの記事を書いてくれたあの吉本くんです!)
内容は「小学校のご飯を三宅町のお米にできないでしょうか?」との相談でした。
三宅町は奈良県の平野部に位置し、町の面積4.06㎢の約36%の1.49㎢が農地です。その農地の約9割が水稲栽培です。
そのなかでも特別栽培米と呼ばれる減農薬のお米の栽培にも力を入れている農家さんがいます。
そんな三宅町の美味しいお米を小学校の子どもたちに食べさせたいという農政担当者としての相談でした。
小学校の給食事情
三宅町の小学校の給食の現状はこんな感じです!
三宅町の学校は小学校1校のみのため、給食センターなどはなく、校舎の一角の給食調理室で毎日給食が作られています。
学校の給食で「三宅町のお米」を食べるハードル
本題の三宅町の学校給食のご飯については、現在、奈良県給食会から購入した「奈良県産のひのひかり」を使っています。
そのお米は、機械での異物混入のチェックを受けた後、奈良県給食会が指定する保管庫で貯蔵され、委託している県内の調理工場で毎朝炊飯され、学校まで給食時間に間に合うようにトラックで運ばれてきます。
小学校では毎日260人分程の給食が作られているため、ご飯は20升ほど炊飯されています。
現状の運用を維持しながら、三宅町のお米を使うためには、次の課題があることが分かりました、、、
【課題その1】お米の生産量が十分か?
三宅町の小学校で消費されるご飯は年間約4000キロ。
炊飯する前のお米では年間約2000キロ。
これぐらいの量は十分に三宅町で作られているようです!
【課題その2】お米の異物混入のチェックが十分か?
現在はお米の異物混入のチェックは2回機会を通して行っています。このチェックする機械だけを貸してくれる業者があるか。
なかなか難しそうな課題でしたが、三宅町産の野菜を取り扱っている事業者の方がお米のチェックできる業者さんを見つけてくれたようで、なんとかクリアできそうです!
【課題その3】お米の保管場合があるか?
これも現在三宅町産の野菜を取り扱っている事業者さんの倉庫を利用できるようです!
お米はスーパーでは常温の棚に置かれていますが、実はお米農家さんにはお米専用の冷蔵庫があるんです。兼業農家の先輩職員の方は、夏場を過ぎて常温だとご飯の味もかなり落ちるようで、冷蔵庫はお米の保管には必須です。
この点、事業者さんでは、このお米専用の冷蔵庫も利用できるようです!(よかった、、、)
【課題その4】加工工場で三宅町産のお米だけを個別に炊飯できるか?または、学校で炊飯ができるか?
実は、ここが一番高いハードルなんです…
加工工場で三宅町産のお米でご飯を炊くには、一度生産レーンを洗浄し、お米が混ざらないようにしないと行けません。それに現在の契約は、奈良県給食会のお米を炊飯するという契約のため、あらたに三宅町産のお米を炊く契約交渉からしないといけないんです。
今回も加工工場と交渉をしたのですが、この工場はいくつかの自治体の学校給食も受注しているため、三宅町だけの炊飯をするとなれば、「納品時間が間に合わない。」とのこと、、、
午前4時からお米の給水をして、午前6時前から炊飯を開始しているようなのですが、何回か炊飯器を入れ替え、炊飯すると現在の出来上がりは午前11時。そこから運搬して11時30分頃にギリギリ納品。
三宅町産米を炊飯するとさらに70分程度納品が遅れるようなんです、、、給食の時間は12時20分からなので、全然間に合いません、、、
では、学校で炊飯器を導入することで炊飯できるか??
これにもハードルがあるんです。
まず、炊飯器を設置するスペースがないんです…
無理やり設置するなら、大きな鍋を撤去したりするなど、設備の省スペース化が必要です…
栄養教諭の先生に聞くと「鍋は3つあり、2つはよく使うが残り1つは撤去しても大丈夫。ただ、撤去してもスペースが狭く、炊飯器を置くと少し動線が気になる…ぶつからないようにしないと事故に繋がるかもしれない、、、」とのことでした。
既存の鍋の老朽化も進んでいるので、設置場所の変更や設備の更新、設備の小型化などを検討しないといけないようです、、、
あと、もう一つ大きな課題は、設備改修をして、給食調理室で炊飯をすることができたとしても、炊飯という調理工程が増えるため、一つメニューが増えるようなものなので、調理員の負担が大きくなるようです、、、
毎日の炊飯が必要なら調理員の人手を増やさないと、メニューを少なくしなければならないかもしれません。
現在、週3日をご飯、週2日をパンが提供されています。学校での炊飯を週2日ぐらいにするなら、今の調理員の人員でも対応できるかもしれないようです。
ただ、給食調理は外部委託しているので、もし週2回以上の炊飯が必要なら、調理員を増員するために委託料の増額も検討しないといけません、、、
【課題その5】給食時間までにご飯が間に合うか?
これはさっきの炊飯の問題とも共通なのですが、既存の加工工場なら間に合わないようです、、、
そのため、給食時間までに配送かのな別の加工工場を見つけるか、学校で炊飯するかの対応が必要になります。
【課題その6】増加する費用の負担をどうするか?
最後の課題ですが、いろいろな課題を解消して、三宅町産のご飯が提供できるようになったとき、その費用負担をどうするかが問題となります。
この給食の費用負担については、実は法律の規定があるんです!学校給食法には、次のように定められています。
この法律によると、
「給食に従事する職員の人件費、施設や設備の修繕料」は、三宅町の負担になります。
「それ以外の経費」は、児童生徒の保護者の負担となります。
現在、給食の費用負担は、
三宅町が「施設・設備の導入経費」「光熱水費などの維持管理費」「調理業務の委託料」「保護者からの給食費の徴収経費」などを負担しています。
そして、児童生徒の保護者が「給食の材料費」を負担しています。
三宅町の小学校の給食は、月4,700円の材料費(今年度から値上げされました)で、年180回提供されています。
ただ、物価高騰による子育て世代の家計の負担増の影響もあるので、月400円を役場が補助することで、学校給食費の保護者負担を4,300円に据え置いています!
そんな学校給食で三宅町産のお米を学校給食で提供するためには、交渉にもよりますが、次の費用の増加が考えられます。
この①の費用は、法律によると保護者負担となるように思えますが、すべてを保護者負担にすると、値上げをしない限り、他の主菜副菜などのメニューの費用を抑えなければなりません。
かといって、給食の質と量を落とすわけにはいかないので、保護者負担を増額するか、他に財源もないので三宅町の予算での負担を増やすかを町長や財政担当課とも検討しなければなりません。
まだまだ協議が必要です、、、
「三宅町のお米を使う。」
家庭の晩ご飯の話だと、三宅町産のお米を販売しているお店を探したりして、お米を購入するだけで、明日からでも食べることができます。
みなさんは「行政はいろいろ遅すぎる」と思われる方が多いかもしれません。
動きの遅さの原因には、課題の多さや、関係者も多くなり、予算の問題などが隠れています。
この三宅町産米を使う話はこれまでも幾度か検討されてきたようです。今回もうまく進むかどうかまだまだわかりません。
自分自身、学校の楽しかった思い出のなかには、揚げパンやカレーライスのおいしさ。特別なメニューが出た嬉しさ。牛乳瓶のフタを集めていた変な友だち。牛乳の早飲み競争で先生に怒られていたような記憶などなど。「給食のおいしさ、楽しさ」がたくさんあります。
三宅町の子どもたちにも、「このご飯いつもより美味しい!」というような、いい思い出になる給食を提供できるよう、学校給食についての検討を進めていきたいと思います!