【認知症を学び、地域で支えようvol.2】MCI(軽度認知障害)
こんにちは、保険医療課 渡邉です。今回は、認知症コラムの2回目です。
第2回テーマ 「MCI(軽度認知障害)」
先日、読売新聞にこんな記事が出ていました。
注目すべきは、軽度認知障害(MCI)の将来推計を初めて公表したということです。
1.MCI(軽度認知障害)ってそもそも何??
MCI(Mild Congnitive Impairment:軽度認知障害)とは、認知症と完全に診断される一歩手前の状態です。放っておくと認知症に進行しますが、適切な予防をすることで健常な状態に戻る可能性があります。
2.MCIと認知症の違いは??
認知症の定義に「ひとり暮らしが困難なほど認知機能が低下した状態」とあります。お金の扱いや、服薬や食事、生活の様々なことをひとりで行うことが難しい状態です。
一方MCIの人は、認知機能に関して低下を感じている、同じ年代の人と比べて認知レベルが低下しているが、日常生活を基本的に正常に送ることができるという状態を指します。ただし、行きなれた場所に行ったり、使い慣れた機械は使えても、新しい機械や場所は苦手になったり、日常生活を「テキパキ」と行うことが難しくなっている状態と言われています。
3.MCIの人はみんな認知症になるの??
答えは「NO」です。MCIの人が必ず認知症になってしまうわけではありません。医療機関でMCIと診断された方が認知症になるのは1年で1割程度。その他はMCIレベルに留まる人と、年相応の正常レベルに回復する方もいます。
4.早めの対策が認知症予防のカギ
軽度認知障害は早期に発見し、適切に対処、予防することで改善する可能性があります。
予防法① 脳を意識して鍛える
数日前の出来事をきちんと思い出す訓練をしてみましょう。食事の内容や視聴したテレビ番組の内容を思い出すのもトレーニングになります。
複数の作業を同時進行させ、適切に配慮する機能を「注意分割機能」といいます。料理のとき、1品だけを作るのではなく何品かを同時進行で作ったり、メモを取りながら電話をしたり、洗濯物を畳みながら会話をするなど、ながら作業で注意分割機能を鍛えましょう。
計画力のトレーニングも必要です。旅行やお出かけのプランを計画したり、効率の良い道順(電車の乗り継ぎ等)や買い物の順序などを考えてみましょう。
予防法② 生活習慣を見直す
・食事
脳の健康を維持するには、糖質の摂り過ぎをやめることや、たんぱく質やビタミンなど必要な栄養素をバランスよく摂ることが大切です。
・運動習慣
定期的な運動習慣は、認知機能の低下予防に有効であることが分かっています。特に酸素を多く取り込む有酸素運動(水泳やエアロビ、ウォーキングなど)は、脳まで酸素が行き渡るため、血流がよくなり脳の働きが活発になります。週3日以上の運動で効果が大きくなることが期待されています。
・知的行動習慣
文章の読み書きや簡単なゲーム、また、美術館に足を運ぶなどして、脳を意識的に動かす習慣を取り入れましょう。
・対人接触
人との交流を積極的に持ちましょう。他人とのコミュニケーションは脳にとって良い刺激となります。地域の交流会などに参加したり、家族との会話を増やしてみましょう。
・その他
喫煙や過度の飲酒は、認知症を発症するリスクの1つとして挙げられています。飲みすぎを控え、できる限り早くから禁煙することをお勧めします。
また、「耳の聞こえにくさ」は認知機能の低下と関連するとされており、補聴器を適切に利用することで、認知機能の低下を遅らせられる可能性があります。
4.まとめとして
MCIで大切なことは、症状について疑問に思ったら早めに検査を受けて早期発見に努めることです。少しでも早く対策することで、認知症に移行するリスクを下げられるだけでなく、改善できる場合があります。
もうひとつ大切なこととして、MCIと診断されたら本人はひどく落ち込んでしまうかもしれません。しかし、改善できる可能性もあるため、心のケアを優先して、前向きにMCIと向き合えるように寄り添うことが大切です。
厚生労働省のホームページに、軽度認知障害について詳しくまとめたハンドブックが掲載されていますので、そちらもぜひご覧ください。